読書部|1冊目「このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年」

読書部

趣味は「読書」ですが、いつの間にか実用書しか読まなくなっていました。
そろそろ小説が読みたいな~、というわけで、読書感想文を書くことに♪
はい、一石二鳥狙いです(^-^)。

さて、書店でこの本(新潮文庫、2024年10月1日発行)が目に入った時、ずっと前に片思いしていた人に街でばったり会った気がしました!
私にまだサリンジャーが読めるかな、とためらいつつレジへ。

Salinger book cover - Sandwich
著者:J.D.サリンジャー、訳者:金原瑞人
『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』(新潮文庫刊)

作者はJ.D.サリンジャー(1919年、アメリカ合衆国生まれ)、訳者は金原瑞人氏。
ちなみに、この本のタイトルにある「このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる」と「ハプワース16、1924年」は別々の作品です。
前者は、サリンジャーの代表作「ライ麦畑でつかまえて」に関連した短編、後者は、いくつかの作品で描き続けた「グラース家」に関する最後の中編であり、彼が最後に発表した作品でもあります。

「ハプワース16、1924年」は、そのグラース家の長男、7歳のシーモアが夏のキャンプに送られて、自分の両親にあてて書いた長い長い手紙です。彼は天才なので、膨大な知識の羅列と大人びた考察が続いてうんざりするほどですが、随所に7歳なりの幼さが顔を出します。
何でもない風を装いながら、自分が起こした事件を打ち明ける下りでは、思わずクスリと笑ってしまいました。男の子あるあるですよね。

彼は、友達や先生とすったもんだするキャンプでの毎日や、一緒に来ている弟や留守宅の家族への愛を、率直に書きまくります。他方で、自らの生涯は長くないと、当たり前のように付け加えもしています。それが両親を傷つけることにはお構いなし。そんな、ちょっと我がままだけど、生きることに一生懸命な彼に会えて、本当に良かった!
実は、1948年に発表された「バナナフィッシュにうってつけの日」という作品の中で、シーモアは亡くなっています。ネタバレで申し訳ありませんが、そのことを知ってからの方が味わい深い作品と思う次第です。

金原瑞人氏は、訳者あとがきで、「「ハプワース」は難物で、じつに手がかかった。しかし、なるべく読みやすい形でということだけは心がけて訳してみた。」とおっしゃっています。
おかげさまで、私は読んでいるうちにシーモアのママの気持ちになり、最後は、彼のところにすぐ飛んで行って、ほっぺにキスをしてやりたくなりました

「ハプワース16、1924年」以外の8つの作品は短編です。登場人物の人生の一瞬一瞬がくっきり写ったモノクロ写真を見ているような読後感でした。
特に、第二次世界大戦を背景とした作品を読んで、戦勝国の若者の人生にも戦争は大きなダメージを与えるという、当たり前のことに今更ながら気付きました。

また、巻末には、訳者あとがきと共に、「対談 サリンジャーの星は出そろったのか?」が掲載されています。訳者の金原氏と作家の佐藤多佳子氏の対談で、「波」2018年7月号より転載されているとのことです。
いずれも、サリンジャーとその作品を理解する上で、たいへん参考になりました。

この本のごきげんポイント

  • サリンジャーを夢中で読んだ、我が青春時代を懐かしく思い出しました。
  • いつの間にか親目線で読んでいる自分に驚きました。
  • アメリカの若い人たちは今、どんなことを考えているのかな、と興味が湧きました。

さあ、また本屋へ行きましょう
次は長編も有りかも!?

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